寒に入ってもお元気元気? 〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。

  

  (続き)

    ◇◇

寒い中でのお話やお説教もなかろと、
とりあえずは後背に存する三木さんのお家へ上げていただいて、
ご家族はお勤めにお出掛け中だが、家令夫人がお出迎えくださったのへご挨拶を交わし。
お嬢様の私室へ通され、
風味の良いミルクティーとマドレーヌを供していただいたのへお礼を言って、さて。
何が何だかの展開を、まずはご当人からご説明いただこうかと、
応接セットへ組み込めそうな立派なソファーに腰かけて、
じいとこちらを見やる客人二人と向かい合い、

「…えっと。」

どう言えばいいのだろと、バツが悪そうに…七郎次には見えるよなお顔になった久蔵だったが、
そのままちらりと視線を投げた先、
庭へと向いた掃き出し窓にかかったカーテンを束ねたところから、
手品のように姿を見せたは、いつの間にか姿を消していた良親殿で。

「ホラ御覧なさい。
 こちらの、一番のお友達にさえ説明できないこと、
 ほいほいとやらかしてどうしますか。」

「〜〜〜。//////」

そんな風にまずはと当家のお嬢様へ窘めのお言葉を突き付ける辺り、
目に余っての箴言はすでに何度か出ていたらしく。
それから、

「さすがの七郎次さんにも、馴染みのないことだと伝わらないようですね。」

日頃の驚くほどの以心伝心も、こたびばかりは通用しないらしいこと、
これは良親の側での不思議事項として受け止める。
何せ、いつもの彼女らときたら、
何も声に出してさえいないような、目配せレベルの意思表示さえ、
ああ○○の新作でしょう?私もあれ気に入りましたvvといった風に、
固有名詞さえ読み取れる凄まじさゆえ、
久蔵さんの意志ごと読み取っておいでかという誤解をする人も少なくはないほど。
だが、そこはさすがにかぶりを振る白百合さんで、

「仕方がありませんよ。
 せめて先程のお爺さんが私とも知り合いだとかいうならともかく。」

日頃のツーカーは、あくまでも共通の土壌がある事象に限られる。
ついさっきまで話題にしていたことだとか、
ここ数日のうち、関心があるような素振りをしていたことだとか。
それだとて親御や姉妹でもあるまいに、ようも把握できてるものだと感心するレベルだが、
そういったものをするりと思い出し、
ああ、こう言いたいのねとかこう思ったんでしょう?とか、
推定や思慮が届いているだけのことだそうで。
だからこそ まるきり知らないことへの対応は無理だとし、
久蔵の口が回らぬならばと、
破天荒お嬢様のいろいろへ微妙に自分たちより通じておいでのボディガードさんへ
こちらのお友達二人が説明を乞うと向き直る。
そんな真摯な眼差しに見据えられた側はと言えば、

「あーっと、まあ、
 切っ掛けは日頃の皆さんの活劇の延長みたいなことだったんですがね。」

何で私が尋問されにゃあならんのか、端正なお顔をやや引きつらせ、
これをいい機会に、お転婆を改めてほしいもんだとの苦笑を噛みしめつつ、
良親さんが語ったところによれば。

「もう二カ月は前になりますか、
 秋の終わりくらいにこの近辺で空き巣騒ぎがありまして。」

お屋敷町なのでセキュリティは万全なお宅揃いだが、
大胆にも押し込んだとかいう手合いじゃあなく、
某家と某家それぞれの、住み込みで働いておいでの方々の住まいの一角、
庭として当てられた区画に干し出されてあった女性の下着が盗まれるという事態が発生。
最初のうちはうっかり飛ばされたかどうかしたものと思っていたが、
立て続いたので気味が悪いと干す場所を変えた。
すると、敵は大胆にも女性ばかりの住まう寮の周辺へと入り込み始めたらしく。
そんな不吉な状態なんですよお気をつけあそばせと、大人の間で交わされていたお話、
ついついお耳へ入れてしまったこちらのお嬢様。
それでもその段階ではまだ、進んで退治しようとまでは思わなんだが、
早起きしたとある朝、気まぐれで出向くジョギングの途中で、
何とも不審な挙動の輩たちが
問題の屋敷からこそこそ出てくるところと鉢合わせし、
しかもポロリと…いかにも若い女性のものだろう
淡色のレース付きショーツなんてものを落としたの、目撃しちゃったものだから。

 『……っ!』

さてはこやつらがここいらをさわさわ騒がすはた迷惑な下着泥棒かと、
お怒りから括目したそのまま、
常備していた特殊警棒で問答無用とばかり薙ぎ倒したからおっかない。

「…久蔵殿、一人でかかるなんて危ないじゃないですか。」
「それに、襲い掛かられてからじゃないと“正当防衛”が成立しませんて。」
「いやいや、キミたち…。」

斜めなことを尤もらしく窘める、そちらも相変わらずな平八や七郎次なのへ、
良親さんがちょっと待てと制したのもまたお約束。
無事だったからこその芝居がかったやり取りを挟んで、それからあのね?

「相変わらずの切れのある殺陣回りで、3人ほどいた不審者を右へ左へ薙ぎ倒し、
 人事不詳にしたうえで最寄りの警察までスマホで通報しかけてたところへ、
 まだいたらしい残党がこそりと後方から殴りかかろうとしたところを、」

意外な展開へ聞き手の二人がぞっとし、
えええっ?!と揃って口許へ手を伏せたのを見計らってから、

「そちらのお宅へ招かれてらした先程の老師が、物音に気付いてか来合わせて、
 そりゃあ見事に杖で伸してしまわれてね。」

「ああ、よかった。」
「助けていただいたのですね。」

こんなお嬢ちゃんへ、背後からの不意打ちを構えるとはけしからんと、
そりゃあ凛々しくも犯人たちへと叱咤してのち、
通報で駆け付けた佐伯刑事へも、

「顔見知りだったんだろうね、
 こんなお嬢ちゃんが義を観てせざるはと飛び出さにゃならんかったとはの、
 警察は何しとったんじゃと、ご叱責を食らったらしくて。」

「つか、佐伯さんたら久蔵のお家周りの所轄にも行くんだね。」

学校は休みだった頃合いなのかなぁ、
中間考査のころじゃないの?と、
意外や意外なお人の登場へ白百合さんとひなげしさんが耳打ちし合っていたものの、

「島田の名が出た。」
「はい?」

返す返すもそこが悔しいと言いたげに紅ばらさんがクッと歯を食いしばり、
肉薄な唇をたわませる。

「いやね、そのというかさっきの御仁、
 木田惣右衛門さんとおっしゃって、
 警察OBで、在任中は警備課で剣道の指南をなさってたらしくてさ。」

佐伯刑事にさっきの窘めを告げた上で、
島田は何しとるんだという叱責をこぼされて。

「一番弟子だと。」
「あらまあ。///////」
「シチさん、反応がおかしい。」

そも、ここの隣町で道場を開いている老師で、
不届き物の出没の話を聞き、防犯対策の指導にと来られたところがそんな騒ぎ。
確かに腕の立つお嬢さんではあるらしいが、
詰めが甘いし何と言ってもまだまだ子供だと久蔵の無茶を窘め、
こんなか弱いお嬢さんに“私がやらにゃあ”と立ち上がらせるとは不手際もいいところと、
教え子の名を出して不甲斐ないと言いたかったらしいのへ、久蔵さんたら斜め上の反応をしてしまったようで。

「でも、それと今さっきの展開はどうつながるの?」
「さてそこだよ。」

もともとは隣町にお住いの老師、
それが最近になってここいらを朝の散歩のコースにしておいで。
そして、久蔵さんとすれ違う折は意味深な挑発めいた一瞥をくださるものだから…。

「ええ〜? それってわざとに?」
「つか、勘兵衛さんと知り合いだってのがどういう関心招いたやらだよね、それ。」

そう。
久蔵の側からの “島田だとぉ?(かっち〜ん☆)”という反応をどこかで気づいたからこその、
間違いなくからかい半分な挑発としか思えない。
そして、このお転婆…という枠では可愛げありすぎな破壊神が、
さっき見たように真剣本気で躍りかかっちゃあ、
ひょひょいといなされて終わってるそうで。

「あのお爺さん、相当に暇なのかなぁ?」
「見込みありと思われたとか?」

それか、キミらの無駄なパッションを相殺してくださっているのかもねと、
実際には口にせず、内心で思った丹羽さんだったらしいです。はい。




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               〜Fine〜  17.01.17


 *警察OB、木田惣右衛門様、
  初出は
  『
行動動機は案外、意外』11/09/23
  今年もお嬢さんたちは大暴れの予感が大ですが、
  お話を書く暇がなくなりつつあるのが問題かも。う〜ん。

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